昨夜、世田谷の某イタリアンに行きました。料理は全般的には美味しく、お店の感じもよいのであえて名前は出しません。
手切りのサンダニエルの生ハムとイチジク、マルゲリータとビスマルクのハーフアンドハーフピザ、松阪肉のボロネーゼ、黒豚のプラムソースなどなどどれも美味でした。
さてドルチェ。私が頼んだのは梨のグラニテ。梨のグラニテいいね、食後にお口がさっぱりしそうと、運ばれてきたグラニテにスプーンを入れようしたが、はてスプーンが通らない。それはグラニテとは名ばかりのアイスキャンデーのようなかちかちの代物でした。
ここで、「グラニテ」についておさらい。グラニテとソルベの違いは何?先ず、糖度の違いが挙げられます。果物のピューレとお砂糖を合わせて攪拌して空気の泡を含ませながら冷し固めるソルベは砂糖の量が多いほど固まりやすくなります。グラニテは砂糖の量が少ない分、固まりにくくなり、固まったしてもシャーベット状でなく細かい氷状に固まります。次に攪拌の程度。ソルベは一般的にはプロペラで強制的に攪拌するアイスクリームメーカーを使って大量の空気の泡をきめ細かく含ませながらとても滑らかな仕上げにしますが、グラニテはバットなんかに入れて冷凍庫に入れたものはときどき木べらでざくざくかき回して砕いて粗い仕上げにします。例えていえばソルベとグラニテの間には、土と砂のような違いがあります。
ここまで書いて明らかなように、グラニテというものは決してアイスキャンデーのように固まったものでなく、口の中でしゃりしゃりする顆粒状のものでなくてはならないのです。今回、料理人はピューレをただ冷凍庫の中に放り込んで攪拌することを忘れたものと思われます。ただ、そうであっても、かちかちの固まりをその場で細かく砕けばOKなのですが、それもせず、スプーンで力任せにすくった固まりをそのまま「グラニテ」として出したようです。
はっきりいって、料理に対する緊張感がなさすぎです。この店は素材に関して、やれどこそこの何々といったようにこだわりがあることで知られていますが、それとの落差が大きすぎ驚かされました。それまでのお料理が悪くなかっただけに、このグラニテにはがっかりで、ディナー全体がぶち壊しになりました。
ピザが売り物のここは若者の客も結構多く、その服装や食べ方はあまりにラフで、ちょっと首を傾げてしまうのですが、それはそれで気楽な雰囲気でいいかも知れません。しかし、だからといって胃袋を預かる料理人まで緊張感を忘れては困ります。
イタリアンではお客の気楽さと料理人の気楽さがごちゃごちゃになってときどきこういったことがおこるようで、この店よりはるかに料理が低レベルの店でしたが、戻しが半分ほどしかできてない乾燥ポルチーニ入りのパスタを食べさせられたイタリアンもありました。
フレンチでは今回のようなことは先ずあり得ないだけに、イタリアンの料理人は猛省すべきかと考えます。
よくいわれる例えですが、優雅にすいすい泳いでいる水鳥は実は水中では必死に脚を動かしています。イタリアンも料理人が常に緊張感をもって本当の料理を出してこそ、お客はお気軽に料理を楽しめるのではないでしょうか。
尚、今回は帰り際にグラニテの件のクレームをお店に伝えましたが、果たしてどこまで理解されたでしょうか。
付記1/もっとも、10年以上も前に今井浜の東急リゾートのフレンチでかちんかちんに凍ったソルベがでてきて立腹したことありましたが。
付記2/私は自分でもシャーベットやグラニテをよく作りますが、初めてグラニテを体験したのは今を遡る30年近く前。村山さんという美貌の店主のグラスリーラパレットというグラスとソルベの専門店でした。未だ若かった私は西麻布のこの店にコーヒーとソルベを楽しみに入り浸ってたんですが、ある日彼女が見慣れなものを出してくれました。「これはグラニテっていうのよ」と彼女が出してくれたのは、しゃりしゃり感が何となく子供の頃の氷を思い出させるコーヒーのグラニテでした。この店は今はなく、村山さんも若くして他界してしまいましたが、今でもグラニテというとこれを思い出します。そういえば、当時西麻布のカピトリーノが開店した頃で「イタリアで食べるのと同じパスタが出てくる」と彼女から教えてもらいました。なお、村山さんはその昔は渋谷のシェジャニーにいらっしゃったこともあると記憶していますので、フレンチオールドファンの方はご存じかも。
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